きょうだいがいるのに、介護の負担が自分一人に偏っている。手伝ってほしいのに、言い出せない。お金のことを切り出すと、関係が壊れそうで怖い——。これは、とても多くのご家庭が抱える悩みです。
この記事では、ある姉妹のエピソードをたどりながら、きょうだいでお金と役割をもめずに分担するための「話し合い方」を、一緒に考えていきます。
「私ばかり」――募っていった不満
Cさんは、実家の近くに住む長女。母親の介護は、自然と「近くにいるあなたがやって当然」という空気の中で、Cさんが一手に担うことになりました。
遠方に住む弟と妹は、たまに顔を出すだけ。「ありがとう、助かるよ」とは言うけれど、具体的に手伝ってくれるわけではありません。Cさんの中には、口に出せない不満が、少しずつ積もっていきました。
なぜ、きょうだい間で介護はもめるのか
もめてしまうのは、誰かが悪いからとは限りません。多くは、こうした「すれ違い」が原因です。
- 距離の差:近くにいる人に負担が集中しやすい。
- 情報の差:日々の大変さは、離れていると見えにくい。
- お金の不透明さ:誰がいくら負担しているか分からず、不公平感が生まれる。
- 「やって当然」という思い込み:感謝が言葉にされず、報われない気持ちになる。
逆に言えば、この「見えなさ」を解消できれば、もめごとの多くは防げます。
もめないための話し合い、5つのコツ

① まず現状を「見える化」する
「大変なの分かって」と気持ちで訴えるより、何に・どれだけ手間とお金がかかっているかを書き出して共有するほうが伝わります。事実が見えれば、きょうだいも動きやすくなります。
② 「責める」のではなく「相談する」
「なんで手伝わないの」と責めると、相手は身構えます。「これからどう分担しようか、一緒に考えてほしい」——味方として相談を持ちかけると、話が前に進みます。
③ お金と役割は「分けて」考える
「お金は出せるが時間はない」「近くに住むから動けるが余裕はない」など、人によってできることは違います。お金の負担と、手や時間の負担を切り分けて話すと、納得感のある分担に近づきます。
④ 「できる人が、できることを」
完全に平等にするのは難しいものです。遠方の人は電話での見守りや事務手続き、金銭的な分担など、離れていてもできる役割を担ってもらいましょう。
⑤ 決めたことは「記録」に残す
口約束は忘れられ、後でまた不満の種になります。分担やお金のことは、メモやグループチャットなどに残して、全員で共有しておくと安心です。
お金の話は、避けずに「最初に」
いちばんもめやすいのが、お金です。だからこそ、あいまいにせず、早い段階で透明にしておくことが大切です。
- 親のお金か、子のお金かを分けて考える。介護費用は、まず親本人の資産から支払うのが基本と考えられています。
- 支出は記録・共有する。領収書を残し、何にいくら使ったかをきょうだいで見られるようにしておくと、不信感が生まれません。
- 不足分の分担を話し合う。足りない分をどう負担するか、収入差も踏まえて相談しましょう。
ポイント
お金の流れが見えないと、「使い込んでいるのでは」といらぬ疑いを生みがちです。記録を残して透明にしておくことが、自分自身を守ることにもつながります。
まとまらないときは、第三者を頼る
家族だけだと感情がぶつかってしまうときは、第三者に入ってもらうのも一つの方法です。
- ケアマネジャー:現実的な介護体制の観点から、分担の相談に乗ってくれます。
- 地域包括支援センター:家族の悩みも含めて、無料で相談できます。
- 専門家:相続なども絡む深刻な対立は、必要に応じて専門家への相談も検討を。
完璧な分担より、「続けられる」分担を
Cさんは思い切って、弟と妹に「一度みんなで話したい」と声をかけました。介護にかかる手間とお金を紙に書き出して見せると、二人は初めて状況の大変さを知り、「金銭面はこちらが多めに持つ」「月に一度は交代で帰る」と申し出てくれたそうです。
負担が完全に半分ずつになったわけではありません。それでもCさんは、「一人じゃないと思えたことが、何より大きかった」と話します。介護は長く続きます。だからこそ、完璧な公平さより、みんなが無理なく続けられる形を目指しましょう。
この記事のまとめ
- きょうだいのもめごとは、多くが「見えなさ」から生まれる。
- 手間とお金を「見える化」し、責めずに相談として持ちかける。
- お金と役割は分けて考え、できる人ができることを担う。
- お金は早めに透明に。記録を残して全員で共有する。
- まとまらないときは、ケアマネや地域包括支援センターを頼る。
※本記事は2026年6月時点の一般的な情報・考え方をまとめたものです。介護費用の負担や親の財産の扱い、相続などの法的な問題については、状況によって対応が異なります。具体的なお困りごとは、担当のケアマネジャー、お住まいの地域包括支援センター、必要に応じて専門家にご相談ください。
