認知症の親を守る|高齢者を狙う特殊詐欺の対策と相談先

 

なぜ今、高齢者を狙う特殊詐欺が急増しているのか

「昔からある話でしょう?」と思われるかもしれません。ですが、被害はむしろ増え続けています。警察庁のまとめによると、2025年(令和7年)の特殊詐欺の認知件数は約2万7,800件、被害額は約1,423億円にのぼりました。とくに被害額は前年からほぼ倍増しています。1年でこれだけ増えるのは、それだけ手口が「進化」しているということです。

とくに急増しているのが、警察官をかたる「ニセ警察詐欺」です。その被害額は約1,005億円にのぼり、特殊詐欺全体の被害額の約7割を占めるまでになりました。「あなたの口座が犯罪に使われている」ともっともらしく告げ、相手を不安にさせて操るのが特徴です。

⚠ ここが大切:金額が大きくなるのは高齢の親世代

ニセ警察詐欺は若い世代も電話を受けていますが、実際に大きな金額を奪われているのは60代・70代が中心です。長年かけて築いた老後の資金が、一度の電話で失われかねません。「元気だから大丈夫」ではなく、お金があるからこそ狙われると考えて備えることが大切です。

高齢の親が狙われやすい、特殊詐欺の手口

高齢の親が狙われやすい、特殊詐欺の手口敵を知ることが、いちばんの守りです。まずは高齢者が狙われやすい代表的な手口を押さえておきましょう。共通するのは「電話で不安をあおり、考える時間を与えず動かす」という点です。

今、気をつけたい主な手口

  • ニセ警察・オレオレ型:警察官や息子・孫を装い、「口座が悪用された」「会社のお金をなくした」と焦らせて現金やカードを求める。
  • 還付金詐欺:市役所や年金事務所を名乗り、「還付金がある」とATMへ誘導し、逆にお金を振り込ませる。
  • サポート詐欺(架空料金請求):パソコンやスマホに「ウイルスに感染」と偽の警告を出し、電話をかけさせて電子マネーや修理代を支払わせる。
  • カード預かり・すり替え:「カードを交換します」と自宅を訪れ、隙を見て本物と偽物をすり替えて盗み取る。

どの手口も、「今すぐ」「あなただけに」「誰にも言わないで」という言葉が出てきたら要注意です。これは、家族に相談させないための決まり文句だと覚えておきましょう。

高齢者を特殊詐欺から守る、今日からできる対策

大がかりな準備は要りません。高齢者を特殊詐欺から守る対策は、「詐欺の電話につながらない・その場で決めさせない」という2つが軸です。本人と家族でできることを分けて見ていきましょう。

親本人ができること

  • 電話は「留守番設定」を基本にする:常に留守番電話にしておき、知っている相手にだけかけ直す。それだけで見知らぬ電話の大半を避けられる。
  • 迷惑電話防止機能を使う:着信時に「この通話は録音されます」と流れる電話機や機能を活用する。犯人は録音を嫌う。
  • 「電話でお金の話は詐欺」と決めておく:お金・カード・暗証番号の話が出たら、それだけで切ってよいと自分ルールにする。
  • その場で決めず、必ず家族に相談する:「一度家族に聞いてから」と言えば、たいていの詐欺はそこで止まる。

離れていても、家族ができること

  • こまめに連絡を取る:普段から話す関係があるほど、「変な電話があった」と親から言い出しやすくなる。
  • 家族だけの合言葉を決める:電話の相手が本当に家族か確かめられる合言葉を用意しておく。
  • 銀行のATM振込限度額を下げる:普段使わない口座は限度額を低く設定しておくと、万一のときの被害を抑えられる。金融機関の窓口で相談できる。
  • 地域包括支援センターに相談しておく:認知症や判断力の不安があるときの心強い窓口。見守りや制度の案内をしてくれる。

⚠ 責めないことが、いちばんの予防になります

「なんでそんな電話に出たの」と叱ると、次に不審な電話があっても親は隠すようになります。狙われるのは誰にでも起こること。「教えてくれてありがとう」と受け止める関係が、被害を早く食い止める何よりの対策です。

お金と判断力を「仕組み」で守る

声かけだけでは限界がある——そう感じたら、公的な仕組みで備える方法もあります。いずれも早く動くほど選べる選択肢が広がります。

  • 日常生活自立支援事業(社会福祉協議会):判断力に不安のある方の通帳や印鑑を預かり、日々のお金の出し入れを手伝ってくれる。被害そのものを起きにくくする仕組み。
  • 成年後見制度(家庭裁判所):判断力が低下した方に代わり、不利益な契約を取り消したり財産を守ったりできる。
  • 家族信託・任意後見:まだ元気なうちに、将来に備えて資産の管理を家族に託しておく方法。

どの制度が合うかは、ご本人の状態やご家庭の事情によって変わります。まずは地域包括支援センターや専門家に相談し、わが家に合う形を一緒に考えてもらうのがおすすめです。

「特殊詐欺かも」と思ったら、すぐここへ

「特殊詐欺かも」と思ったら、すぐここへ迷ったら、被害に遭う前でも相談できます。むしろ「まだ何も渡していない」段階の相談がいちばん効果的です。番号をメモして、電話のそばに貼っておきましょう。

  • 110番:今まさに自宅に人が来る・お金を渡そうとしている・ATMに誘導されている、という緊急時。
  • 警察相談専用電話「#9110」:「詐欺かもしれない」「不審な電話があった」という防犯の相談。全国どこからでもつながる。
  • 消費者ホットライン「188」:訪問販売や契約・解約など、買い物やお金のトラブルの相談。最寄りの消費生活センターにつながる。
  • 地域包括支援センター:認知症や判断力の不安、見守りや制度の相談。お住まいの地域の窓口へ。

もし被害に遭ってしまっても、契約書やメール、相手の連絡先などは捨てずに残しておいてください。早く相談するほど、被害を取り戻せる可能性が高まります。恥ずかしいことでは決してありません。悪いのは、だます側です。

この記事のまとめ

  • 高齢者を狙う特殊詐欺の被害は倍増中。とくにニセ警察詐欺で、高齢の親世代の大きなお金が狙われている。
  • 対策の軸は「詐欺の電話につながらない」「その場で決めさせない」の2つ。
  • 留守番電話・録音機能・合言葉・振込限度額の引き下げが、今日からできる基本。
  • 声かけで限界を感じたら、日常生活自立支援事業や成年後見などの仕組みも検討を。
  • 迷ったら早めに「#9110」「188」「地域包括支援センター」へ。責めずに支える関係が最大の防御。

「うちの親に限って」と思う気持ちが、実はいちばんの油断です。今日この記事を閉じたら、ぜひお母さま・お父さまに一本電話をかけて、「最近、変な電話ない?」と聞いてみてください。その一言が、大切な人を守る第一歩になります。

※本記事は2026年9月時点の情報(警察庁が公表した令和7年の特殊詐欺確定値など)をもとに作成しています。統計や制度は今後変わる可能性があります。相談窓口や成年後見・日常生活自立支援事業など具体的な手続き・ご家庭の状況については、お住まいの自治体の窓口や地域包括支援センター、専門家にご相談ください。

📋 参考・参照情報

※掲載情報は執筆時点のものです。制度・数値は改定される場合がありますので、最新情報は各機関の公式サイトをご確認ください。