「介護保険と障害福祉サービスって、どちらもヘルパーさんが来てくれるんですよね?」
このように聞かれることがあります。
たしかに、家にヘルパーさんが来てくれる支援や、日中に施設へ通う支援など、見た目だけを見ると似ているサービスがあります。
でも実際には、「誰が対象になるのか」「どのようにサービス量が決まるのか」「どこに相談するのか」が違います。
制度の話は、どうしても難しく感じますよね。
スマホの料金プランを見ているときのように、「結局、自分はどれに当てはまるの?」となりがちです。
今回は、介護保険と障害福祉の違いを、できるだけ身近な言葉で整理していきます。

目次
- まず結論から
- 介護保険と障害福祉の違い① 対象者が違う
- 介護保険と障害福祉の違い② 65歳以降は、相当する介護保険サービスがある場合、原則として介護保険が優先される
- 介護保険と障害福祉は併用できる?
- 介護保険と障害福祉の違い③ 介護保険は支給限度額の中で組み立てる
- 介護保険と障害福祉の違い④ 障害福祉は支給決定でサービス量が決まる
- 介護保険と障害福祉の違い⑤ 自己負担の考え方が違う
- 介護保険と障害福祉の違いで迷ったときの相談先
- 介護保険と障害福祉の違いを箇条書きで整理します
- まとめ|介護保険と障害福祉の違いを知ると、相談しやすくなる
- 参考・参照
まず結論から
介護保険と障害福祉サービスの大きな違いのひとつは、介護保険が要介護度ごとの支給限度額をもとにサービスを組み立てるのに対し、障害福祉サービスは本人の障害の状態や生活環境、介護者の状況などを踏まえて、市町村が個別に支給決定する点です。
介護保険では、要介護度に応じた支給限度額の範囲内で、ケアマネジャーなどがケアプランを作成し、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与などを組み合わせます。
一方、障害福祉サービスでは、市町村が本人の障害の状態や生活環境、介護者の状況などを踏まえて、サービスの支給量を決定します。
ただし、介護保険と障害福祉の違いは、サービス量の決まり方だけではありません。
対象者、認定や支給決定の流れ、相談先、自己負担、65歳以降の優先関係などにも違いがあります。
ここから順番に見ていきましょう。

介護保険と障害福祉の違い① 対象者が違う
まず、介護保険は40歳になると被保険者として加入する制度です。
65歳以上の方は、要介護認定または要支援認定を受けた場合にサービスを利用できます。
40歳から64歳までの方は、介護保険の対象となる特定疾病により介護や支援が必要と認定された場合に、介護保険サービスを利用できます。
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/about.html
障害福祉サービスは、障害のある方の生活や社会参加を支えるための制度です。
厚生労働省は、介護の支援を受ける場合は「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合は「訓練等給付」に位置づけられ、利用の際のプロセスが異なると説明しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、生活介護など、障害福祉サービスにはさまざまな種類があります。
たとえば居宅介護は、居宅での入浴、排せつ、食事の介護、調理、洗濯、掃除などの家事援助を行うサービスとして説明されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
ここで大切なのは、「介護が必要だから必ず介護保険」「障害があるから必ず障害福祉」と単純に分けきれない場合があることです。
年齢、原因となる病気、障害の状態、生活環境、使いたいサービスによって、確認すべき窓口が変わります。
介護保険と障害福祉の違い② 65歳以降は、相当する介護保険サービスがある場合、原則として介護保険が優先される
ここは、多くの方が不安になるところです。
結論として、65歳になったからといって、障害福祉サービスがすべて自動的に使えなくなるわけではありません。
一方で、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、基本的には介護保険サービスに係る保険給付が優先されます。
この考え方は、障害者総合支援法第7条に関係する「介護保険優先」の考え方です。法律の条文は、e-Gov法令検索で確認できます。
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123
また、厚生労働省資料でも、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、原則として介護保険サービスに係る保険給付を優先して受けることが示されています。
ただし、これは「65歳になったら、障害福祉サービスがすべて介護保険に一律で切り替わる」という意味ではありません。
厚生労働省資料では、障害のある方が同様のサービスを希望する場合でも、その心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり、介護保険サービスを一律に優先させて必要な支援を受けられるかどうかを一概に判断することは困難であると示されています。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000111533.pdf
たとえば、介護保険の訪問介護と、障害福祉の居宅介護は、どちらも自宅での支援という点では似ています。
内容が重なるサービスについては、介護保険サービスが優先されるかどうかを確認する必要があります。
ただし、利用者の状況やサービスの種類によって判断されるため、一律に介護保険だけで対応すると決まるものではありません。
介護保険と障害福祉は併用できる?
介護保険サービスを利用している方でも、制度上、障害福祉サービスを併せて利用する場面はあります。
厚生労働省の障害者の利用者負担の説明でも、障害福祉サービスの負担額について「介護保険も併せて利用している場合は、介護保険の負担額も含む」とされています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html
ただし、これは希望すれば必ず併用できるという意味ではありません。
障害福祉サービスの支給決定では、本人の心身の状況、社会活動、介護者、居住等の状況、サービス等利用計画案、サービスの利用意向などを踏まえて、市町村が判断します。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/riyou.html
そのため、「介護保険だけでは足りないから、必ず障害福祉サービスを追加できる」とは断定できません。
ここは、必ず市町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員、ケアマネジャーに確認したいところです。

介護保険と障害福祉の違い③ 介護保険は支給限度額の中で組み立てる
介護保険サービスを使うには、まず市区町村の窓口で要介護認定の申請をします。
申請後、認定調査や主治医意見書をもとに判定が行われ、市区町村が要介護度を決定します。
認定結果は、要支援1・2、要介護1から5、または非該当という区分になります。
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
その後、要介護1以上の方は、居宅介護支援事業者の介護支援専門員、つまりケアマネジャーに相談してケアプランを作成します。
要支援1・2の方は、地域包括支援センターに相談する流れです。
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
介護保険の自己負担は、原則としてサービス費用の1割です。
ただし、一定以上の所得がある方は2割または3割になります。
居宅サービスでは要介護度ごとに支給限度額があり、限度額内なら1割から3割負担、限度額を超えた分は全額自己負担です。
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
ここは家計に直結します。
「少しだけサービスを増やすつもり」が、限度額を超えると一気に負担が増えることがあります。
だから、サービスを増やしたいときは、ケアマネジャーにこう聞いてください。
「この回数にすると、支給限度額を超えますか?」
「超える場合、自己負担はいくら増えますか?」
この2つを確認するだけでも、不安はかなり減ります。
介護保険と障害福祉の違い④ 障害福祉は支給決定でサービス量が決まる
障害福祉サービスでは、本人の障害の状態や生活環境、介護者の状況などを踏まえて、必要なサービス量が個別に決まります。
厚生労働省は、障害福祉サービスを「個別に支給決定が行われる」ものと説明しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
ここでよくある疑問が、「希望した時間数は必ず認められるの?」という点です。
答えは、必ずしも希望どおりになるとは限りません。
障害福祉サービスは、希望した時間数がそのまま自動的に認められる仕組みではありません。
厚生労働省の利用手続きでは、申請後、障害支援区分の認定やサービス等利用計画案の提出などを経て、市町村が支給決定を行う流れが示されています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/riyou.html
だからこそ大切なのは、「困っていること」を具体的に伝えることです。
たとえば、
「家事が大変です」
だけでは、支援の必要性が伝わりにくいことがあります。
それよりも、
「片手が使いにくく、調理中に包丁を使うのが危ない」「薬の管理を忘れてしまうことがある」「入浴時に転倒の不安がある」「同居家族はいるが、日中は仕事で支援できない」
このように、生活の場面ごとに伝えると、必要な支援が整理しやすくなります。
病院で「なんとなく体調が悪いです」と言うより、「いつから、どこが、どんなふうに困っている」と伝えたほうが診察しやすいのと同じです。
介護保険と障害福祉の違い⑤ 自己負担の考え方が違う
障害福祉サービスの利用者負担は、所得に応じて月ごとの負担上限額が設定されています。
厚生労働省は、生活保護世帯は0円、市町村民税非課税世帯は0円、一般1は9,300円、一般2は37,200円と示しています。
ただし、一般1は「市町村民税課税世帯で所得割16万円未満」の区分であり、20歳以上の入所施設利用者やグループホーム利用者は除かれます。
これらの方は、市町村民税課税世帯の場合、一般2に該当すると説明されています。
また、食費、光熱水費、家賃など、サービス費とは別に実費負担が発生する場合があります。
実際にかかる金額は、利用するサービスや世帯状況によって確認が必要です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html
介護保険も、サービス費の1割から3割負担だけで終わらない場合があります。
施設サービスでは、サービス費の自己負担に加えて、居住費、食費、日常生活費などが必要になることがあります。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、介護保険施設利用の場合は、費用の1割、一定以上所得者は2割または3割負担のほかに、居住費、食費、日常生活費の負担も必要になると説明されています。
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
「制度上の自己負担」と「実際に財布から出ていく金額」は、同じではありません。
ここはとても大事です。

介護保険と障害福祉の違いで迷ったときの相談先
介護保険を使う場合、要介護1以上の方は居宅介護支援事業者のケアマネジャー、要支援1・2の方は地域包括支援センターに相談する流れです。
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
障害福祉サービスを使う場合は、市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援事業所、相談支援専門員に相談するのが基本です。
厚生労働省の障害福祉サービス利用手続きのページでも、申請、障害支援区分の認定、サービス等利用計画案、支給決定などの流れが示されています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/riyou.html
相談支援専門員は、障害福祉サービス等を申請する方のサービス等利用計画の作成や、支給決定後の見直し、モニタリングなどを通じて、適切なサービス利用を支援する専門職です。
まだどちらの制度を使うべきかわからない場合は、市区町村の介護保険担当窓口、障害福祉担当窓口、地域包括支援センターのいずれかに相談してください。
「窓口を間違えたらどうしよう」と心配しすぎなくて大丈夫です。
大切なのは、今の困りごとを言葉にして、最初の相談につなげることです。
介護保険と障害福祉の違いを箇条書きで整理します
・介護保険と障害福祉サービスは、似たサービスがあっても制度の仕組みが違う
・介護保険は、要介護度ごとの支給限度額の範囲内でサービスを組み合わせる
・介護保険の居宅サービスは、限度額を超えた分が全額自己負担になる
・障害福祉サービスは、本人の障害の状態や生活環境などを踏まえて、個別に支給決定される
・障害福祉サービスは、希望した時間数がそのまま自動的に認められる仕組みではない
・65歳以降は、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合、基本的には介護保険サービスに係る保険給付が優先される
・ただし、65歳になったからといって、障害福祉サービスがすべて自動的に終了するわけではない
・介護保険サービスを利用している場合でも、障害福祉サービスを併せて利用する場面は制度上ある
・ただし、希望すれば必ず併用できるという意味ではなく、市町村が本人の状況や必要な支援内容を踏まえて判断する
・自己負担は、介護保険と障害福祉で考え方が違う
・障害福祉サービスには月ごとの負担上限額があるが、食費、光熱水費、家賃などの実費負担が別に発生する場合がある
・相談先は、介護保険ならケアマネジャーや地域包括支援センター、障害福祉なら市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員

まとめ|介護保険と障害福祉の違いを知ると、相談しやすくなる
介護保険と障害福祉サービスは、どちらも暮らしを支える大切な制度です。
ただ、仕組みは同じではありません。
介護保険は、要介護度に応じた支給限度額の中でサービスを組み合わせる制度です。
障害福祉サービスは、本人の障害の状態や生活環境、介護者の状況などを踏まえて、個別に支給決定される制度です。
そして、65歳以降は、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合、基本的には介護保険サービスに係る保険給付が優先されます。
ただし、障害福祉サービスがすべて一律に終了するわけではありません。
制度の名前は難しくても、大切なのはとてもシンプルです。
その人が、安心して暮らせること。
必要な支援につながれること。
家族だけで抱え込まなくていい状態をつくること。
介護保険も障害福祉サービスも、そのための大切な道具です。
迷ったときは、ひとりで判断せず、市区町村の窓口、地域包括支援センター、ケアマネジャー、相談支援専門員に相談してみてください。
「こんなことで相談していいのかな」と思うことほど、早めに相談して大丈夫です。
参考・参照
厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護保険とは」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/about.html
厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
厚生労働省「サービスの利用手続き」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/riyou.html
厚生労働省「障害者の利用者負担」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html
厚生労働省「障害のある人に対する相談支援について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/soudan_shien.html
e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123
厚生労働省「高齢の障害者に対する支援の在り方について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000081565.pdf
厚生労働省資料「常時介護を要する障害者等に対する支援について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000111533.pdf